TEI Watch丨製造業はインドの大国志向を維持できるか www.deekpay.com
## インド:大国の野望と製造業の夢
近年、インド太平洋地域の地政学的・経済的地位はますます高まっており、地理的優位性を持つインドはこれを自国台頭の絶好の機会と捉え、2047年までに先進国になるという野心的な目標を掲げている。インド経済の要であり、総合的な国力の重要な表現であるインドの製造業の将来は、モディ政権の大国志向実現への道筋を大きく左右する。
まずはインドの "大国の夢"
インド洋は世界の主要航路を結ぶ戦略的位置であり、世界の商品輸送の道である。近年、インド太平洋は世界的な商業の中心地となっただけでなく、大国の戦略的な舞台にもなっている。インド太平洋地域は世界貿易の65%を運び、世界GDPに60%を寄与していると推定されている。インド洋の中心として、インドの戦略的自信は絶えず高まっている。
2018年、モディ首相はダボスで開催された世界経済フォーラムで、中国をキャッチアップターゲットにしたいと宣言した。2021年、インド独立75周年を迎えたモディ首相は、国内製造業の発展を再度強調し、2047年までに先進国になるという目標を掲げた。4年後の2022年、インドの第2四半期のGDP成長率は13.5%という驚異的な数字を記録し、英国を抜いて世界第5位の経済大国になった。
第二に、モディ政権の "インドへの道"
1.国内:改革の深化と競争力の再構築
モディ政権は、民主主義、人口ボーナス、市場が「インドの夢」の基盤であると考えている。インド独立75周年の演説で、モディはインドを「民主主義の母」と呼んだ。
モディ政権は「アムリット・カー」ビジョンを打ち出し、次の25年をインドの発展の新たな始まりと捉え、奴隷制の痕跡をすべて取り除き、社会進歩を促進することを約束し、改革の方向性として、政治的安定、汚職との闘い、中小企業(SME)とデジタル技術の発展の重要性を強調している。
2020年、ニュークラウン・エピデミックの影響を受け、インドはアトマ・ニルベール・バーラト経済計画を打ち出し、経済活力の強化、インフラ整備の促進、活力ある社会の創造を目指していた。
近年、インド政府はまた、ビジネスの発展と雇用創出を奨励するため、一連の生産連動型優遇措置を採用している。これらの優遇措置は、医薬品、電子機器製造、医療機器、電気通信、食品、家電製品、繊維製品などの分野に重点が置かれている。
2.対外的:提携の拡大と国際的優位性の追求
モディ政権の外交政策は現実主義を反映しており、自国の利益を守るためにあらゆる機会を利用する必要性を強調している。ジャイシャンカール前外相は、インドの外交戦略を「米国と関わり、中国を管理し、欧州を育成し、ロシアをなだめ、日本に役割を与え、近隣諸国を引き付け、近隣諸国を拡大する」とまとめ、「戦略的スイートスポットへの収束」を目指している。
近年、インドと米国は中国の台頭に対抗するという共通の関心を深め、米印防衛協力枠組み協定の締結、四極協議への参加、2+2二国間枠組みの構築など、さまざまな分野で協力してきた。米国とインドは中東における共通の利益を拡大するためにも協力しており、インド・イスラエル間の協力も強化されている。
日印関係も改善され、両国は今後5年間で5兆円(約420億ドル)の投資目標を設定した。日本の支援を受けて、インドはエレクトロニクス製造の目標を2026年に引き上げ、3000億ドルのエレクトロニクス製造ハブになることを目指している。
ロシア・ウクライナ紛争後、インドの外交政策はより利益重視になった。インドは大量のロシア産原油を輸入し、米国の対ロ制裁に反抗してルピー・ルピー取引システムを確立した。インド外務省は、米国の圧力には屈しないと答えたが、その後、ロシアに対する言動を厳しくし、G7とともにロシアを非難した。インドは結局、バイデン政権が導入したインド太平洋経済枠組みIPEFの通商交渉から離脱した。
III.インドの課題
インドは大国への野心を示しているが、自国の強みと目標との間には依然としてギャップがある。
1.戦略的リスク
いわゆる民主主義、人口ボーナス、市場の需要だけでは、インドの「行動の自由」を保証することは難しい。インドにはトップレベルの戦略設計が欠如しており、経済発展をリードする戦略プランを策定することができず、それを効果的に実行することはさらに困難である。
2.脆弱な産業基盤とサプライチェーン
インドの産業基盤・サプライチェーンのレベルと目標との間には大きなギャップがある。エレクトロニクス製造業は資本集約型産業であり、インドでは設備投資、土地、電力のコストが高い。インドのエネルギー資源は乏しく、エネルギー安全保障上の課題は深刻である。インドの輸送インフラは後進的で、物流コストが高く、サプライチェーンのパフォーマンスと信頼性も低い。インドの中小企業は生産規模の拡大が難しい。
3.財源不足
インドは、その製造業の目標のために抜本的な支援プログラムの開発を達成するために、しかし、その財政資金の不足は、公的債務は、新興国の高いレベルに達している。インドが大規模な景気刺激策をサポートするのに十分な財政支出を保証できるかどうかは現実的な問題である。
4.防衛産業への高い依存度
インドの国防製造能力は弱く、軍備は海外に大きく依存している。近年、国防サプライヤーの多様化を推進しているにもかかわらず、インドは欧米のサプライヤーへの依存から脱却できずにいる。
5.劣悪なビジネス環境
インドのビジネス環境は厳しく批判されており、原材料の輸入関税の高さ、州の独立性、官僚主義、契約執行の困難さ、徴税の透明性の欠如など、すべてが外国投資家の信頼と意欲を制限している。
6.製造業のニーズに適応するための社会文化的困難
インドの社会と文化は非常に分断されており、結束力と「職人気質」に欠けている。カースト制度、言語的多様性、宗教的多様性などの要因が、インドの社会発展の制約となっている。
7.労働力不足
インドは労働力率が低く、熟練労働者が不足している。人口ボーナスの放出には政府による多額の投資が必要であり、これは政府にとっても企業にとっても課題である。
8.近隣諸国との緊張関係
インドは近隣諸国との関係が緊迫しているため、地域のサプライチェーンに深く統合することが難しい。インドは中国、パキスタン、ネパールと領土問題を抱えており、バングラデシュやスリランカとも摩擦がある。インドが地域包括的経済連携(RCEP)に加盟していないことも、近隣諸国に疑問を投げかけている。
IV.結論
モディ政権が提唱した「メイク・イン・インディア」戦略は10年近く実施されているが、その効果は明らかではない。インドは積極的な改革意欲を示しているが、インドに残された時間は多くない。世界の製造業の発展は根本的な変化を遂げており、大国間のサプライチェーンシステムは乖離する傾向にあるかもしれない。大国への道は今後さらに険しくなり、インドの製造業への野心はまだ新しいポジションを見つける必要がある。
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